カテゴリー : 博物館・科学館

LIFE with ART ~ダムタイプ『S/N』と90年代京都@早稲田大学坪内博士記念演劇博物館

LIFE with ART ~ダムタイプ『S/N』と90年代京都@早稲田大学坪内博士記念演劇博物館

1990年代にメディアとテクノロジーを駆使した、めくるめくようなパフォーマンスを展開していたダムタイプ。その中心的メンバーである古橋悌二のHIV感染をきっかけに、最も社会性を持った作品となったのが「S/N」。

本企画展では、当時この「S/N」の制作に関わったメンバーのオーラルアーカイブを中心に、90年代の京都のアートシーンを読み解くための貴重な資料が展示されている。

古橋がHIV感染を周囲のメンバーに知らせるための手紙があり、これを読んでから受け取ったメンバーのビデオを見ると、その衝撃や戸惑いがよくわかる。

また、90年代の京都における各種の活動やアートセンターについての資料も興味深かった。

こうした資料は地元のアートアーカイブ団体が収集、保管していたものとのこと。アートアーカイブは結局、対象に対する愛着なしには成立しないもの。地道な活動ぶりに胸が熱くなった。

ファンタスマ―ケイト・ロードの標本室@東京大学総合研究博物館 小石川分館

ファンタスマ―ケイト・ロードの標本室@東京大学総合研究博物館 小石川分館そもそもこの博物館の「驚異の部屋」というコンセプトの完成度が高い。

明治時代からの学術研究に使用した図面、機材、人体モデル、動物の剥製、鉱物標本。それを収める時代のついた什器。空間を構成する建物。ケイト・ロードの色鮮やかな架空の生物がそこに馴染んでいるかというとそうとは言えなかった。

時代と歴史のある空間に何かを付け加えてアートとして再構築ようというのは至難の業であるが、今回はうまくいっていないようだった。

それを成功させるにはベルサイユ宮殿で展示をした村上隆ほどの力量が必要ということか。

火星 ウソカラデタマコト展@東京大学総合研究博物館

火星 ウソカラデタマコト展@東京大学総合研究博物館多分、低予算ながら強烈に引きつけられる展示会を連発している東大研究博物館の新しい展示会。今回はJAXAのMELOS(ミーロス)計画について。

はやぶさ騒動のさなかであり、あかつきが金星に向けて順調に航海中なのになぜ火星?と思ったけど、キャプションをよく読んでみると納得。

この展示会に特徴的なのはMELOS計画で検討中の4つの素案(アイデア)をそのまま提示して、みなさんならどれがいいと思う?と聞いていること。宇宙開発の計画について市民の声を聞くのは意外とこれが初めてとのこと。また、研究者とのフリートークも予定されているとのこと。

公金によるプロジェクトには市民の理解が欠かせなくなったという政権交代のひとつの成果なんでしょうか。いずれにしても成果だけを報告するこれまでの宇宙開発とは違った取り組みに好感度アップです。

国立民族学博物館

国立民族学博物館京都のついでに以前から行きたかった大阪千里の国立民族学博物館へ行ってきました。

万博記念公園駅でモノレールを降りて、太陽の塔を見ながら広大な万博公園を横切ってけっこう歩きますが、辿りつくとそこには大満足が待っていました。

ここには世界の文化を表す、生活、音楽、娯楽、食べ物、宗教に関わるモノが集められています。オセアニアで言えば海洋民族の証であるカヌーの実物はもちろんですが、アフリカの町でよくみかけるドリンクスタンドの実物など現代風俗にも目配りがあります。また、韓国の酒幕という宿屋は実物が中庭に再現されています。

館内はアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど地域別のゾーン構成になっているのですが、一回りするとめくるめく人類の文化が目の前に展開され、まさに3時間で世界一周体験。しかし、どのゾーンも興味深く、それぞれをじっくりみていると一日では足りない。

しかも、図録によるとここに展示されているものは収蔵品のうちわずか5%とのこと。しかも今日でも世界中に散らばった学芸員が収集を続けているのです。収蔵庫の様子を思い浮かべてナショナルミュージアムの実力に圧倒されました。

私が気に入ったのはタイの人形劇ワレン・ゴレックで使われる人形のお面のゾーン。いずれも不思議な表情のお面が黒い壁に大量に並んでおり、一度見たら忘れられなくなります。

こうして世界のゾーンを歩いていると自分の生理感覚に近い文化はどこかが分かってきます。私はイヌイットの削ぎ落とされた表現ながら現実とずれた自然信仰に生理的に好感を持ちました。しかし、一方メキシコのカトリシズムの過剰な宗教儀礼表現に嫌悪感に近いものを感じつつ強く魅せられました。

千葉の国立歴史民俗博物館と同じく、もっとアクセスのいい場所にあるといいのにと思います。東大総合研究博物館の取り組みでモバイルミュージアムというのがあるのだけど、みんぱくもそんなアウトリーチの取り組みをしたらどうだろうかなどと考えてしまいました。

ショップで買い求めた「世界を集める」という本によると、虫害対策のことが書いてありました。新潟県立美術館でも虫害事件がありましたが、特にこの博物館のように世界中から木製やら石造りの実物を持ってくる以上、これは欠かせないことでしょう。収蔵庫には巨大な燻蒸施設を備えているとのこと。博物館の管理・運営が垣間見えて興味深かったです。

関西で半日時間があったら必ずまた行きます。

国立歴史民俗博物館

国立歴史民俗博物館国立の施設が歴史を取り扱うときには国としてのプライド、科学的検証、対外的配慮など細心の配慮が必要。それを一手に扱うのが千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館。国立博物館としての物量と質の高さに圧倒されます。

縄文時代から始まり、平安時代、戦国時代・江戸時代、明治・大正時代、そして昭和初期から現代。さらに農山村から都市部に息づく民俗・風習をもカバーしている。それぞれにおいて政治、文化、生活など必要な分野を取り上げているのはもちろんだが、プラスアルファとして特筆すべき要件を挙げている。例えば古代ゾーンにおける「沖ノ島」。この小さな島からは大量の銅鏡など驚くべき古代遺跡が出土していることで知られているが、この島のためにひとつの部屋を用意し、そこに発掘洞窟を実物大で再現している。
現代ゾーンにいたっては現代の民俗文化を象徴するアイテムとして法善寺横丁を取り上げ、水掛不動をやはり実物大で再現している。

特に昭和初期から戦争に至る時期については国内外において微妙なテーマであることもあり、この博物館でも取り上げてこなかった。しかし、ようやく今年になって現代ゾーンを開設した。これは各方面へ配慮したバランスととれた展示となった。

とにかく巨大な空間に日本列島とその周辺についての数千年にわたる時間の流れを詰め込んだ展示である。じっくり見ていたら一日では終わらない。できれば何日か通って極めたいものだが、とにかく行きにくい。ただでも佐倉は遠いのにさらにバスに乗って20分ほど。それにバスは便が少ない。でも、行くだけの価値はある。

「驚異の部屋」展@東京大学総合研究博物館小石川分館

「驚異の部屋」展@東京大学総合研究博物館小石川分館小石川植物園のはずれに建つ、旧東大医学校の建物が博物館になっている。

ここには東大が創業以来行ってきたあらゆる分野の研究活動で使われた道具、収集物、研究資料が展示されている。天体望遠鏡、動物の剥製、植物のサンプル、計測道具、地球儀、建築模型、産業機械の模型など、ともすればとりとめもない展示である。また、各展示物にはキャプションがないので説明や理解増進にはかなり消極的に思える。

しかし、歴史ある建造物内を移動し、窓外の庭園を眺め、古色蒼然とした什器やそれに格納されたアイテムを見ていると、自然と日本人の博物研究や技術研究の空気が伝わってくる。ここでは、特定の知識を伝えることをしないことによって、日本の学術研究というものがこれまで歩んできた道のりや、その時代の空気を伝えてくれる。博物館展示の極北としてあるべき形だと思う。

とかく饒舌な展示手法やサイエンスコミュニケーターが期待される今日の博物館であるが、ある地点を守り続けてくれる場所であり、年に何回かは巡礼のように訪れたい場所である。

命の認識@東京大学総合研究博物館

命の認識@東京大学総合研究博物館アート展ではないが展示制作の考え方に通じるものがあると思いここに紹介。

部屋いっぱいを占めるテーブルに整然と並べられた膨大な数の骨たち。イノシシ、クマ、タヌキ、ミンククジラなどがおそらく数百個あるのではないだろうか。また、入り口近くには死産のゾウとキリンのホルマリン漬けガラス水槽。さらに自由に開けることができる大型冷凍庫の中には、これから標本にされるであろう小動物のビニール袋。

それぞれがなんなのか、何故このような展示を作ったのかの説明がほぼない。なので、知識としての理解はできないだろうけど、タイトルにあるように命というものの物理的な存在感を体感することができました。

ウェブサイトのキャッチコピーが「苦悩の部屋へようこそ」だもの。細々とした意図をきっぱりと捨てて伝えたいことをひとつに絞ったこの展示制作者は、ホント腹が座っています。

常設展示も人骨だったし、骨づくしの一時でした。教えてもらってたまたまやっていた巨大哺乳類の解体作業も遠望できた(遠くてよく分からなかったが)。